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伊藤若冲の鳥獣花木図 屏風 升目描きについて雑考 07 [Des notes sans fin φ(。。)]

鳥獣花木図屏風の形式面での特徴の一つに升目に分割された空間を一旦塗りつぶしている点を指摘し 塗りつぶすことが 経糸(縦糸)と緯糸(横糸)の交差の集合/集積
と解釈し 屏風が何らかの布の立体たる「織物」であることを類推し 京都の祇園祭り
の山鉾の掛装をヒントに「ペルシャ絨毯」ではないか?との仮想着地点に立ちました.
この指摘に類する見解は テレビ東京
「美の巨人たち」 2013年4月13日(土)でも紹介されており 目新しいものではありません.

「鳥獣花木図屏風」全体を囲む幾何学模様は、江戸時代に輸入されたペルシャ絨毯の模様にヒントを得た作品である。ペルシャ絨毯は京都の祇園祭にも用いられており、京都の商家に生まれた若冲は、そのエキゾチックな色彩や図柄に魅了されたものだと考えられている。

http://kakaku.com/tv/channel=12/programID=618/episodeID=635628/

ここでは さらに進んで ヒントを得ただけでなく 伊藤若冲はこの屏風によって
「ペルシャ絨毯」そのものを表象したとの着地点に立てるか否かを検討しようと思います.

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注目したのは 升目を一旦 塗りつぶした後 さらに升目を分割して 升目の中に 正方の点描を施こしている箇所です. この表象とペルシャ絨毯の織り方が一致すれば この
屏風そのものが「ペルシャ絨毯」を表象している所作になりえる,と思います..

4.gif
http://www.carpet-association.jp/column/007.html

ペルシャ絨毯の織り方の特徴は一言で 縦糸と横糸を完全に結ぶ点に求められます.
類似している中国の緞通が縦糸に横糸を単に通すだけにとどまるのと対照的です.この結びによってペルシャ絨毯は薄く 通気性に富み 軽く 耐久性を有し ダニ等を寄せることなく 折り畳むことができることになります.

具体的な織り方は以下の様に毛足/パイルでノットと呼ばれる結び目を作っていく作業になります. 絨毯の品質はこのノット数の多寡が決めての一つになり 高級品では1センチ平方に24の2乗 576ものノットが織られるそうです.


さて,ペルシャ絨毯においても方眼紙に図案が転写され 作業の指示になる下絵が作成されます.  これを元に一本一本の糸を織り手が、毛足(毛羽)になるパイル糸を一つ一つ指先で二本の経糸に結ぶ作業を繰り返し、横一列が終わると緯糸を左右から交互に入れて鉄ぐし(バーズ)でパイルを強くたたき、目を詰めパイルを形成します。

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この下絵の方眼の一升は絨毯の毛足 パイルの一結び つまりワンノットになるように
彩色されます.

予定調和的ですが 屏風の升目の正方な点描は このペルシャ絨毯のワンノットに対応/
相当してます. 屏風が約8万6もの升目に分割され 一つ一つ塗りつぶされているのは
伊藤若冲がペルシャ絨毯の織り方自体に気づいたからに他なりません.
このために 屏風は絹ではなく 彩色が容易な紙本の形態を選択しています.
伊藤若冲はこの発見の痕跡を明示的に屏風の一部に残しています.
具体的には 所有者 ジョープライスさんが発見した「ムクドリ」の「反射」描写によってです.

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升目は三重に塗られています.すなわち升目は三重です.
まず黒を塗り、
その内部にそれよりやや小さく黒い漆で四角を描き、
更にその内部にそれより小さく青で四角を描いているのです。
光を当てると漆の部分が光って黒からシルバーに見えるようになります。

メトロポリタン美術館の調査結果
NHK BS『若冲ミラクルワールド・第三回』

では伊藤若冲はどのようにして このペルシャ絨毯のノットに気づいたのでしょうか?
絨毯はテーラードメイド つまり1点ものなので 絨毯が完成すると処分されるそうです.

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推論すると 伊藤若冲は絨毯を裏から観察して無数のノットを発見したのだと思います.
絨毯の織り方は,繰り返しになりますが,
毛足(毛羽)になるパイル糸を一つ一つ指先で二本の経糸に結ぶ作業を繰り返し、横一列が終わると緯糸を左右から交互に入れて鉄ぐし(バーズ)でパイルを強くたたき、目を詰めパイルを形成するものです。これを裏から見ると結び目であるおびただしいノットが目の前に現れるはずです.この気の遠くなる作業がすべて人の手作業によって遂行されることに敬意を払い屏風を升目描きで作成したのでは? この屏風そのものが「ペルシャ絨毯」を表象しているのではないか?がこの屏風の形式面での着地点です.

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さて 
他にも グリッド線が太い部分と細い部分は 絹と羊毛のハイブリッド? メインの白象にノットの描写がなく ノットの種明かしを小動物で表現したのは何故?等の疑問点や 
屏風の実質面を登場モチーフ等によって解釈する作業が残っています.
直感的に白象と鳳凰が大きく描かれる点から((大乗)仏教の世界を表象している点にとどめ今後の酒肴にしたいと思います.